続・返信(1)

ひきつづき返信です。
まず、昭和49年建設省令第1号と法令番号について。

昭和49年建設省令第1号
都市緑地保全法【中略】の規定に基づき、並びに都市緑地保全法を実施するため、都市緑地保全法施行規則を次のように定める。
都市緑地保全法施行規則
(収容委員会に対する裁決申請書の様式)第1条 都市緑地保全法施行令(以下「令」という。)第1条の建設省令で定める様式は、別記様式のとおりとする。
【2条以下略】
 
附則
(施行期日)1 この省令は、法の施行の日(昭和49年2月1日)から施行する。
 
首都圏近郊緑地保全法施行規則の全部改正)2 首都圏近郊緑地保全法施行規則(昭和42年建設省令第9号)の全部を次のように改正する。
首都圏近郊緑地保全法第6条第9項の規定に基づく収用委員会に対する裁決申請書の様式を定める省令
首都圏近郊緑地保全法施行令第1条の建設省令で定める様式は、次のとおりとする。【様式略】
 
近畿圏の保全区域の整備に関する法律施行規則の全部改正)3 近畿圏の保全区域の整備に関する法律施行規則(昭和43年建設省令第10号)の全部を次のように改正する。
近畿圏の保全区域の整備に関する法律第7条第9項の規定に基づく収用委員会に対する裁決申請書の様式を定める省令
近畿圏の保全区域の整備に関する法律施行令第3条の建設省令で定める様式は、次のとおりとする。【様式略】

たしかに、附則で2つの省令が全部改正されています。これだと、3つの省令(法施行規則、首都圏様式、近畿圏様式)が同じ法令番号になってしまいます。しかも、これら3つはその後に異なる経過をたどることになります。
法施行規則は、都市緑地法施行規則と題名をかえて現行法令として効力を有します。

平成6年建設省令第30号
都市緑地保全法施行規則の一部を改正する省令
都市緑地保全法施行規則(昭和49年建設省令第1号)の一部を次のように改正する。
【略】

残りの2つの省令は、それぞれ一度改正されたのちに廃止されています。

首都圏近郊緑地保全法施行規則(平成12年総理府建設省令第7号)
附則第2号 首都圏近郊緑地保全法による近郊緑地保全区域における行為の届出に関する規則(昭和42年首都圏整備委員会規則第1号)及び首都圏近郊緑地保全法第6条第9項の規定に基づく収用委員会に対する裁決申請書の様式を定める省令(昭和49年建設省令第1号は、廃止する

近畿圏の保全区域の整備に関する法律施行規則(平成12年総理府建設省令第8号)
附則第2号 近畿圏の保全区域の整備に関する法律施行規則(昭和43年総理府令第1号)及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律第7条第9項の規定に基づく収用委員会に対する裁決申請書の様式を定める省令(昭和49年建設省令第1号は、廃止する

これですと、法令番号による法令特定はできないことになります。では法令名による特定はどうかといえば、「近畿圏の保全区域の整備に関する法律施行規則」という題名の省令が2種類(昭和43年総理府令第1号と昭和43年建設省令第10号が並列して存在)あることからも困難であることがわかります。このことは、一つの法令で他の複数の法令を全改することが技術上不可能ではないために起きるわけであり、これを避けようとすると実質的にどう考えても全部改正であるような改正を一部改正の形式で改正することにするか(たとえば平成18年法律第109号)、一つの法令で複数の法令を改正することを避けるかでしょうか。
 
次に、日本橋出張所の設置命令について。

昭和28年法務省令第36号
法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則等の一部を次のように改正する。
第1条 法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則(昭和24年法務府令第12号)の一部を次のように改正する。
【略】
 
第2条 登記事務委任規則(昭和24年法務府令第13号)の一部を次のように改正する。
第1条第3項を削り、第4項を第3項とし、以下1項ずつ繰り上げる。
 
第3条 東京法務局日本橋出張所の設置等に関する命令(昭和24年法務府令第14号)次のように改正する。
東京都中央区日本橋兜町二丁目に東京法務局日本橋出張所を置き、左の登記業務を取り扱わせる。
【1〜3号略】

公布文では当該省令がすべて一部改正であるように書いており、現に第2条は典型的な一部改正になっています。ところが第3条では「一部を改正する」という規定ぶりになっておらず、しかもその内容も、どうみても全部改正です。
日本法令索引でも、昭和28年法務省令第36号の法令題名は「東京法務局日本橋出張所の設置等に関する命令」であり、そこで残り2つの法令を一部改正したという扱いになっています。それはそれで実体を正確に表しているのですが、しかし、公布文から考えると当該省令は改正省令(「〜規則等の一部を改正する省令」)であるはずです。それでも、法制執務上では、日本法令索引と同じ扱いをしています。

昭和49年法務省令第29号
第3条 東京法務局日本橋出張所の設置等に関する命令(昭和28年法務省令第36号)は、廃止する。

 
そして、保健師助産師看護師法の附則について。制定時の条文をみてみます。

附則第53条 旧看護婦規則により都道府県知事の看護婦免許を受けた者は、第31条の規定にかかわらず、看護婦の名称を用いて、第5条に規定する業をなすことができる。

ここでは「用いて」とありますが、「用いて」は前後を並列(または・かつ)するのではなく「用いることによって〜する」という意味でしょう。たとえば下の例では、「外国語を用いるかまたは(かつ)旅行に関する案内をする業」という意味ではないはずです。

通訳案内業法(昭和24年法律第210号)【制定時】
(定義)第2条 この法律で「通訳案内業」とは、報酬を受けて、外国人に附き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をする業をいう。

並列の場合は、「用い、」でしょう。下の例では、「鐘を用いなければならない、かつ、最高速度を超えてはならない」となります(しかし実際は、鐘を鳴らさずに帰署する消防車が多いようです)。

消防法(昭和23年法律第186号)【制定時】
第26条2項3文 消防署に引き返す途中その他の場合は、鐘又は警笛を用い、一般の車馬規定による最高速度を超えてはならない。