法律効力(5・完)

前回(id:kokekokko:20081010#p1、id:kokekokko:20080910#p1、id:kokekokko:20080908#p2、id:kokekokko:20080906#p1)のつづき。
「法律としての効力」について、形式面と内容面があることは前回書きました。では、これら両者の関係については、どのように考えられるでしょうか。あるいは、形式と内容のどちらが、先に決まるのでしょうか。
そう考えてよくみると、これら両者については、ある種の循環定義のような関係があるように思えます。
 
形式面では、「太政官布告などのうち、内容としての法律効力を持つもの」を法律とするとしておきながら、内容面では「法律によって規定されているもの」に法律としての効力を認めるとしていることになっているようです。
科刑手続(憲31)や財産権制限規定(憲29)、勤労条件(憲27)などが法律によるべきもの、という点には異論がないのですが、では栄典に関する規定(旧憲法下では天皇大権に属していたために勅令によって規定され、現在では政令で規定される)などはどうなのかといえば、これは議論があるところです。また、文化の日建国記念の日とで、前者の日付が法律事項であり後者の日付が政令事項である*1のは、歴史的経緯であるとしかいえないとも考えられます。あるいは、従来法律で規定されていたものが「技術的側面が強い」として政令によって規定される例もみられます。
そうなると、一方で「内容が法律であるならば、法律として扱う(法律で改廃する)」としておきながら、他方で「法律として扱われているならば、それは内容が法律事項なのであろう」としていることになるわけです。法律事項の範囲は憲法の要請などによって変わるので、一義的に定められないのも問題です。
(2)で扱った司法省布達は、「法律で廃止されたから法律事項(=昭和22年に失効)」なのか「命令事項(=法律で命令を廃止)」なのかはよくわかりません。命令事項を規定する命令を法律で廃止したことが皆無ではない例は、(3)で取り上げました。
 
というわけで、「太政官布告の効力」の問題も、「管轄省庁以外による改正」の問題も、なかなか解決は難しいようです。公文式以前の法令については、その形式によって発令機関は確定できるが、効力は確定できないようです。
太政官布告については、元老院の審議などがなされたものもあります。ところが緊急に制定されたもの(爆発物取締罰則など)についてはこの審議はなく、これにより効力の大きさをはかるのは困難です。また、布告と達などの間では効力の差異が認められないことや、省庁の命令・達にも法律事項は多くあります。太政官自体、その終期には行政機関の側面が強かったようであり、立法機関として発令するという要素は希薄でした。そうなると、(形式基準の根拠が乏しいので)現在の基準で法律事項かどうかを決定するか、布告は一律に法律扱いするかしかないと思います。その際には、昭和22年限りの失効を調整する必要があります。

*1:祝日の日付のうち建国記念の日については、建国記念の日となる日を定める政令(昭和41年政令第376号)により2月11日とされる。