法務

■死刑の在り方についての勉強会
法務省の検討会である死刑の在り方についての勉強会では、法案を公表しています。以前より出ているものと同じで、死刑と無期懲役との間に重無期刑をつくるものです。
法案では、これによる法改正も行っていて、ほかの法律で「死刑」とあるときには「死刑または重無期刑」などというように文言を改めています。でもって、ここでなぜか陪審法も改正しようとしているのです。

附則第五条 陪審法(大正十二年法律第五十号)の一部を次のように改正する。
第二条中「死刑又ハ」の下に「重無期若ハ」を加える。

しかし陪審法は、効力停止以後は昭和22年に一度改正されたきりで、その後の法改正にまったく対応しておらず、今回これを改正する必要はかなり薄いです。もともと旧刑訴を前提にしている法律であるうえに、「大審院」「治安維持法」「陸軍法務官」「郡長」などの文言は放置されていますから、今回だけ改正するというのは、統一を欠く気はします。あるいは、これを機に陪審制も見直すというのかもしれませんが。
またさらに、今回の法案では刑法施行法の改正は行わないつもりのようです。おそらく、現行法令システムを使って「死刑」で検索をかけるという処理は行っているはずなので、刑法施行法は意図的に改正しないつもりのようです。
ただそうなると、

第二十九条 死刑、無期又ハ短期一年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ重罪ト看做ス

により、重無期刑に該当する罪は旧刑法の重罪とはみなされなくなります。まあ、重無期刑に該当する罪は同時に死刑か無期懲役かのいずれかにも該当しているようなので、実際上の不具合はないのかもしれませんが。
ただそれでも、施行法第33条の解釈は苦しくなるでしょう。

第三十三条 死刑、無期又ハ六年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ処セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタルモノト看做ス

そう考えると、「新しい種類の刑罰を導入する」というのは、法制執務としてはやや高いレベルの作業となるはずです。
 
■破産者と取締役
みうらさんのところで、

破産者は取締役になれないというのは事実たる慣習でした。そして商法に規定されました。会社法には規定されませんでした。
会社法に否定するような規定がないから、持続すると考えるがいかが。

とありました。
ただこれは、通説の解釈でいいかなという気がします。つまり、かつては「破産者は資力がない」「財産管理権のない者が会社の財産を管理できるというのはおかしい」という理由で商法254ノ2が制定されたところ、連帯保証によって会社が倒産すると代表者も破産することになり再生の妨げになる、という理由です。
破産は委任終了事由なのでいったんは退任することにはなるのですから、その者を再度選任することを認めてもかまわないのでしょう。