240条と241条 (3)山本説(重畳適用説)の検討
これらの問題について、近時、結果的加重犯に故意ある場合を含めつつさらに重い結果についての故意犯を重畳適用する説(山本光英説)がある。
まず強盗殺人罪につき*1、240条は死亡結果について故意ある場合を含めるという通説を認めながら、この場合には殺意を明示するために199条も適用して観念的競合とする。240条のみの適用だとすると、殺意がある場合とない場合との区別がつかず、また殺意という不法内容が明示できないとするのである。
つぎに強盗強姦殺人罪につき*2、241条は死亡結果について故意ある場合を含めるという立場に立ちながら、この場合には殺意を明示するために199条も適用して観念的競合とする。
またここで、240条を受ける243条は、強盗傷人の未遂も含むとして、通説(強盗殺人の未遂のみ。強盗傷人の未遂は単なる強盗罪)と異なる見解を示す。
さらに強盗強姦致傷罪につき、*3、擬律のうえで致傷の結果とその基本となる行為との結びつきを評価ないし明示することが重要である。一方で、強盗強姦致傷の場合には致傷の結果に必ずしも故意があったとはいえない場合も想定されることからすれば、常に傷害罪を適用することには問題がある。そこで、(1)致傷の結果が強盗行為によって生じた場合には、241条前の強盗強姦罪と240条前の強盗致傷罪との観念的競合、(2) 致傷の結果が強姦行為によって生じた場合には、241条前の強盗強姦罪と181条2項の強姦致傷罪との観念的競合、(3) 致傷の結果がいずれの行為によって生じたのか不明の場合には、「疑わしきは被告人の利益に」の原則どおり、241条前の強盗強姦罪と181条2項の強姦致傷罪との観念的競合、とする。