非嫡出子

前回(id:kokekokko:20131121)、戸籍法改正の議論で、死産の届出に関する規程も改正しようとしていたということを書きました。それについて、参議院の会議録がアップされています。
(第185回国会 参議院法務委員会第9号)(平成25年11月28日)

小川敏夫君 今日は厚労副大臣にお越しいただきました。厚労省で統計調査の際、死産があった場合にはその死産の届けの際に非嫡出子であることを明示して届けるというように扱っているようですが、この点はいかがでしょうか。
大臣政務官高鳥修一君) 厚労政務官でございます。小川委員にお答えを申し上げます。
 厚生労働省では、死産の届出を基に人口動態調査を実施いたしておりまして、その中で、嫡出子、嫡出でない子の別の死産の状況を把握するために、嫡出子、嫡出でない子の別に自然死産と人工死産に分けた統計などを作成いたしております。これによりまして、嫡出でない子につきましては嫡出子に比べ経済的理由による人工死産の割合が多いといった状況の把握に活用しているところでございます。
 また、当該統計は国立社会保障・人口問題研究所におきまして人口動向を把握し分析する資料として活用されているとお聞きいたしております。
小川敏夫君 まず、今の答弁の中で若干触れていましたけれども、嫡出の子と非嫡出の子となるべき者の死産ですか、これについて有意な差が認められるわけですか。
大臣政務官高鳥修一君) 今把握している数字を若干申し上げますと、嫡出子の死産につきましては約三五%が人工死産であるということに対しまして、嫡出でない子の死産については約八七%が人工死産であるということでございます
小川敏夫君 死産という言葉の定義ですけれども、これは、いや、じゃ死産という言葉の定義を説明していただけますか。どういうものが死産というのか。
大臣政務官高鳥修一君) 死産ということの定義でございますが、死産とは妊娠第四月以降における死児の出生をいい、死児とは出産後において心臓拍動、随意筋の運動及び呼吸のいずれをも認めないものをいうとされております。
小川敏夫君 だから、要するに、人工中絶というのがありますよね。そうすると、四か月未満ですと、これは中絶、まあ流産してしまうのもあるかもしれないけど、中絶という一般的な言葉であるから、それは死産に入らないわけですね、今の統計の話ですと。そうすると、四か月以降は中絶の場合もこれは死産に当たると、これはそういうお話ですね。それから、生まれ出た子供が、分娩で出た子供が実は呼吸しなかった、死んでいたというのも死産ということで、この今言われた死産の中にはちょっと幅広い定義があるわけですね。
 それで、差があるというのはどちらの方ですか。私が直感的に考えましても、自然の分娩で出てきた子供が死亡していたという死産の場合には、嫡出子であろうと非嫡出子であろうと差はないと思うんですよ。ただ、中絶の場合ですと、やはり様々な事情、要するに夫婦間でない子供でしょうから、中絶ということについては影響があるのかなと思うんですが。どうです、言わば死産という定義の中で分娩前の死産と分娩したときの死産とがありましたけれども、そこら辺のところで有意な差があるかどうかはどうですか。
大臣政務官高鳥修一君) お答えいたします。
 データとしては、今、死産の中で分けたものは持ち合わせておりません。
小川敏夫君 有意な差があって、統計上それが非常に統計を取る意味があるということであれば、そうした区別を付けることについては特に異を述べないけれども、では、更にその上に立って、非嫡出子という言葉を使うことの合理性も考えてみなくてはいけないと思うんですね。
 つまり、ただ単に非嫡出子という言葉を使わなくても、いろんな使い方があると思うわけですよ。つまり、死産をした母親が、あなたは婚姻中ですかという聞き方でも十分足りると思うんですよね。ですから、非嫡出子ですかという、そのような質問の仕方じゃない工夫も同じ目的を達することができると思うんですよね。母親は、あなたは婚姻中ですかという質問でも、生まれてくる子供が婚姻中なら嫡出子、婚姻中じゃなければ一般には非嫡出子ですから、非嫡出子という言葉を殊更使わなくても同じ目的を達せられるんじゃないですかと思うんですが、どうでしょう。
大臣政務官高鳥修一君) 先ほど申し上げたように、その状況を引き続き把握をするために、死産における嫡出子と嫡出でない子の別に関する統計は引き続き作成する必要があると考えております。
 なお、出生届と死産届は市区町村の窓口において一体のものとして処理されておりますので、もし仮に死産届の記載事項見直しをするといたしましても、出生届の見直しと併せて行うことが適当であると考えます。
小川敏夫君 だから、そういう統計上、嫡出子と非嫡出子について区別してその実態を把握するという意味があるということなら、その意味があるならという前提の上に立って私は質問したんですよ。統計上のそうした目的を達するためには、非嫡出子ということを、殊更用語を使わなくても、あるいは非嫡出子ということを書かせなくても足りるやり方があるんじゃないですかと聞いたわけです。ですから、一つの例えとして、母親は、あなたは婚姻中ですかという聞き方でも足りるんじゃないですかと聞いたわけです。
大臣政務官高鳥修一君) 嫡出でない子という用語は、あくまで法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子を意味するものとして用いられている法律用語と解しております。
小川敏夫君 婚姻関係にないと。だから、母親に、あなたは婚姻中ですかどうかという質問の仕方でも目的を達するんじゃないですかと聞いているわけです。
大臣政務官高鳥修一君) 繰り返しになりますけれども、出生届と死産届は市区町村の窓口において一体のものとして処理されていることから、仮に死産届の記載事項見直しをするとしても、出生届の見直しと併せて行うことが適当であると考えております。
小川敏夫君 私の質問に答えていただけないんですけれども。私の質問の趣旨をよく理解して、十分な検討をしていただきたいというふうに思いますが、これ以上押し問答はしませんけれども。

糸数慶子君 嫡出用語と嫡出概念の撤廃について次に伺います。
 十一月五日の参議院法務委員会で、嫡出用語や嫡出概念は見直しを行うべきではないかという私の質問に対しまして、深山政府参考人は、嫡出という用語につきましては国連の各種人権委員会からその使用の撤廃を勧告されたことがあるというのは承知しております。各種の人権委員会からの勧告に対しては、条約締結国として誠実に対処する必要があるのはもとよりでございますが、他方で、このような勧告は法的拘束力を有するものではないというふうにも理解しているところです。嫡出でない子という用語は、あくまでも法律上の婚姻関係にない男女間の間に出生した子を意味するものとして民法、戸籍法で用いられている法律用語でございまして、差別的な意味合いを含むものではないと思っております。したがって、現段階でこの用語の使用を見直すための法改正をする必要まではないと思っておりますと答弁をされました。
 そこで、お伺いいたしますが、民法の条文上使われている嫡出でない子ですが、民法には用語の説明はありません。法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子を意味するというのも理解はしております。しかし、嫡というその言葉には正統あるいは正しく受け継ぐという意味もありますので、嫡出でない子は正統でない子となってしまうため、当事者から使用しないでほしいと求められています。ですから、国連の社会権規約委員会は二〇〇一年に嫡出概念の撤廃を、子どもの権利委員会は二〇〇四年に嫡出でない子という差別用語を使用しないよう求めたのだというふうに思います。諸外国を見ても、嫡出概念や嫡出用語の撤廃は行われております。
 二〇一〇年三月、法務省は、嫡出でない子の出生の届出に当たり、届け書の父母との続き柄の欄の表記等がされていない場合の取扱いについて通知を出されていますが、これは当事者への配慮があったからではないでしょうか。二〇一二年七月二十七日の衆議院法務委員会で、嫡出用語を見直すよう求められた政府参考人の原優民事局長は、民法で現在、嫡出である子あるいは嫡出でない子という言葉が使われておりますので、この言葉を今後、法改正をする場合にどうするかというのは検討事項だというふうに考えておりますと答弁をされています。民法にも最も精通した前局長の御答弁も差別的意味合いを含むとの認識があり、そのような答弁だったというふうに私は理解しております。
 用語の見直しが必要だと思いますが、谷垣大臣の御見解をお聞かせください。
国務大臣谷垣禎一君) 私は、日本語は言霊というものがあるという御意見がありまして、一つ一つの言葉が、何というか、中立的な概念として使われるという以上にいろんな陰影を帯びて使われるという局面があるのは承知いたしております。
 ただ私は、余りにも、頭の固い法律家だと糸数先生に言われるかもしれませんが、嫡出子という概念はあくまで法律上の婚姻から生まれた子というふうにとらえておりまして、それに特別なニュアンスというか陰影を余りにも付け加えて運用していくのは好ましくないと私は考えております。
 ですから、私は、あくまで嫡出概念というのは法律上の婚姻によって生まれた子であるかと。しかし、これは、ですから私の考え方からしますと、そこを改めるということは、法律婚から生まれた子と法律婚から生まれなかった子という民法の区別そのものを、何というんでしょうか、いじらなければなかなかできないのではないかと私自身はそのように考えております。
糸数慶子君 私、谷垣大臣は決して頭の固い大臣だとは思っておりません。
 当事者のやはり受ける印象、そして周りの社会的な状況から考えましても、やはりもうこの辺りでそろそろ変えていくべきだというふうに思います。それは以前の政府参考人からもそういうような、原優民事局長もそういうことをきちんと答弁をされた事実があるわけで、やはりもう少し頭を柔らかくしていただいて変えていただくということを要望したいと思います。

「あなたは婚姻中ですかどうかという質問の仕方」では「嫡出子か否か」の代替にはならないですし、かといって「死産子の父親はあなたの夫か」という質問をあわせてすることが適切かという問題もあります。一方で、「出生届と死産届は一体処理されているから、記載事項見直しは両者あわせて行う」としていますが、両者の目的が違うのでそれもちょっとどうなのかなという気もします。