責任

(資料)責任に関する条文・審議(その24・現行刑法〜第二次大戦-23-)

前回(10/1)のつづきです。初回は6/7。改正治安維持法説明(案)です。 第五十七条 予防拘禁ニ付スル旨ノ決定確定シタル場合ニ於テハ之ヲ執行セザルベカラズ。本法ハ予防拘禁ノ執行ニ関シ原則的ニハ刑ノ執行ニ関スル手続ニ依ルモノト為シタリ。即チ検事ノ指…

現行刑法制定までの責任能力概念

資料は来週からアップさせます。今回は責任能力についての規定・学説を概観してみます。 日本における責任能力規定は、唐律に由来する部分と大陸法由来の部分とがあります。 7世紀ごろの唐律(名例律)には以下のような規定があります。 諸年七十以上、十五…

(資料)責任に関する条文・審議(その23・現行刑法〜第二次大戦-22-)

前回(9/30)のつづきです。初回は6/7。改正治安維持法説明(案)です。 第五十六条 本条ハ予防拘禁期間ノ起算日ヲ規定ス。即チ、予防拘禁ノ期間ハ予防拘禁ニ付スル旨ノ決定確定シタル日ヨリ起算スルモノト為シタリ。 刑事訴訟法上決定ハ、即時抗告ヲ許スモ…

(資料)責任に関する条文・審議(その22・現行刑法〜第二次大戦-21-)

前回(9/28)のつづきです。初回は6/7。改正治安維持法説明(案)です。 第五十二条 予防拘禁ノ決定ハ本来ノ意味ニ於ケル裁判ニアラズ。従ツテ決定及即時抗告ニ関スル刑事訴訟法ノ規定ハ之ニ対シ当然ニハ適用ナキヲ以テ、特ニ本条ヲ設ケタリ。 決定ニ関スル…

(資料)責任に関する条文・審議(その21・現行刑法〜第二次大戦-20-)

資料のうちのいくらかはにわとりショコラに置いています。 前回(9/27)のつづきです。初回は6/7。改正治安維持法説明(案)です。 第五十条 予防拘禁ノ手続ハ本来刑事手続ニ非ザルヲ以テ当然ニハ刑事訴訟法ノ適用ナシ。仍テ本条ヲ設ケテ刑事訴訟法中勾引及…

(資料)責任に関する条文・審議(その20・現行刑法〜第二次大戦-19-)

前回(7/26)のつづきです。初回は6/7。改正治安維持法説明(司法省案)です。 第四十五条 裁判所ハ予防拘禁ノ請求アリタル場合ニ於テ前条ノ規定ニ依リ原則トシテ本人ノ陳述ヲ聴クベキモノニシテ、是ニ依リ決定ヲ為スニ熟シタリト思惟スル場合ニ於テハ直チニ…

甲府地判平成16年5月6日

甲府地方裁判所です。 完全責任能力と責任無能力とに鑑定の見解の分かれた事案において,心神耗弱による限定責任能力を認めた判決 この事案で、裁判所は殺意を認定しています。 さらに,弁護人は,犯行当時,被告人は「軽く」突き刺す程度との認識で,横手小…

(資料)責任に関する条文・審議(その17・現行刑法〜第二次大戦-16-)

前回(7/16)のつづきです。初回は6/7。順序は前後しますが改正治安維持法説明(案)です。7/12の文章の直前にあるものです。 第三章 予防拘禁 概説 思想犯人ハ矯激ナル主義乃至信念ヲ抱有シ、彼等ノ所謂理想社会ヲ希求スルニ止ラズシテ、之ガ実現ノ為ノ実践…

(資料)責任に関する条文・審議(その16・現行刑法〜第二次大戦-15-)

前回(7/13)のつづきです。初回は6/7。 順序が前後しますが、ここで昭和16年(1941年)の治安維持法改正の司法省案をアップしてみます。 治安維持法改正法律案(未確定案)(昭和16年1月15日) 第三章 予防拘禁 第三十七条 第一章ニ掲グル罪ヲ犯シ刑ニ処セ…

(資料)責任に関する条文・審議(その15・現行刑法〜第二次大戦-14-)

前回(7/12)のつづきです。初回は6/7。 第四十条 本条ハ検事ガ裁判所ニ対シ予防拘禁ノ請求ヲ為スニ付テノ手続規定ナリ。 予防拘禁ノ請求ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ附置セラレタル検事局ノ検事ガ其ノ裁判所ニ之ヲ為スヲ原則トシ、本人保護観察中…

(資料)責任に関する条文・審議(その14・現行刑法〜第二次大戦-13-)

前回(7/9)のつづきです。初回は6/7。 昭和16年(1941年)に治安維持法が改正されました。これについて、司法省が説明を作成していました。 改正治安維持法説明(案) 昭和16年3月司法省 逐条説明 第三十九条 本条ハ如何ナル場合ニ於テ、如何ナル者ガ、如何…

(資料)責任に関する条文・審議(その13・現行刑法〜第二次大戦-12-)

前回(7/8)のつづきです。初回は6/7。 朝鮮思想犯予防拘禁令に関する勅令です。 朝鮮総督府予防拘禁所官制(昭和16年勅令第166号) 昭和16年3月4日公布/昭和16年3月10日施行 第一条 朝鮮総督府予防拘禁所ハ朝鮮総督ノ管理ニ属ス 第二条 予防拘禁所ニ左ノ職…

(資料)責任に関する条文・審議(その12・現行刑法〜第二次大戦-11-)

前回(7/6)のつづきです。初回は6/7。 治安維持法の改正によって予防拘禁の制度が導入される直前に、朝鮮思想犯予防拘禁令が公布、施行されました。 *** 朝鮮総督府による法案です。起草日時の詳細は不明です。 朝鮮思想犯予防拘禁令案(昭和16年朝鮮総督…

(資料)責任に関する条文・審議(その11・現行刑法〜第二次大戦-10-)

前回(7/5)のつづきです。初回は6/7。 治安維持法改正に関する国会議事録です。 治安維持法改正法律案 第六十五回帝国議会両院本会議及委員会議事速記録要綱(内務省警保局) 第五章予防拘禁 第一節 立法ノ趣旨 ○小山司法大臣(衆委二3.1) 「思想犯人ハ申…

(資料)責任に関する条文・審議(その10・現行刑法〜第二次大戦-9-)

初回は6/7。文字化けを防ぐために一部の漢字や記号を書き換えています。たとえば「いんあ」はひらがなに直しました。また、引用文中の【 】部分は私が挿入したものです。 刑法改正での保安処分の検討とは別途に、治安維持法において予防拘禁の制度を導入する…

(資料)責任に関する条文・審議(その9・旧刑法〜現行刑法-1-)

初回は6/7。 刑法での責任論に関する条文などの資料です。なお、文字化けを防ぐために一部の漢字や記号を書き換えています。たとえば「いんあ」はひらがなに直しました。また、引用文中の【 】部分は私が挿入したものです。 責任論の範囲は、違法性の意識(…

(資料)責任に関する条文・審議(その8・現行刑法〜第二次大戦-8-)

前回(6/25)のつづきです。初回は6/7。 行為後に法律の変更があった場合の規定として、仮案では保安処分について特別の規定を置いています。準備草案では「犯罪終了シタル後法律ノ変更アリタルトキハ判決時法ヲ適用ス但シ犯罪時法ニ依リ処罰セサル行為ヲ者…

(資料)責任に関する条文・審議(その7・現行刑法〜第二次大戦-7-)

前回(6/24)のつづきです。初回は6/7。 改正刑法仮案の注釈のつづき。 第百三十九条 懲役ノ執行ノ終了ニ因リ釈放セラルヘキ者釈放後ニ於テ更ニ放火、殺人又ハ強盗ヲ為ス虞アルコト顕著ナルトキハ裁判所ハ予防処分ニ付スル旨ヲ命スルコトヲ得〔註〕本条ハ懲…

(資料)責任に関する条文・審議(その6・現行刑法〜第二次大戦-6-)

前回(6/18)のつづきです。初回は6/7。 改正刑法仮案の注釈のつづき。 第十五章 保安処分 〔註〕 「保安処分」トハ社会的秩序ノ破壊ニ対スル危険ヲ防止スルヲ目的トスル手段ヲ謂フ。刑罰ヲ以テ単ニ犯罪ヲ予防スル為ノミノ手段ナリトシ、又保安処分ハ犯罪事…

(資料)責任に関する条文・審議(その5・現行刑法〜第二次大戦-5-)

前回(6/14)のつづきです。初回は6/7。 改正刑法仮案の注釈のつづき。 第十条 罪ト為ルヘキ事実ヲ知ラスシテ犯シタル者ハ故意アリト為スコトヲ得ス 罪本重カルヘクシテ犯ストキ知ラサル者ハ其ノ重キニ従テ処断スルコトヲ得ス〔註〕 本条第一項ハ犯意ニ於ケ…

(資料)責任に関する条文・審議(その4・現行刑法〜第二次大戦-4-)

前回(6/11)のつづきです。初回は6/7。 改正刑法予備草案発表の直後に発足した刑法並監獄法改正調査委員会が、昭和6年(1931年)に改正刑法仮案の総則部分を公表しました。 泉二新熊と牧野英一が中心となった草案であるとされています。 刑法並監獄法改正調…

(資料)責任に関する条文・審議(その3・現行刑法〜第二次大戦-3-)

前回(6/8)のつづきです。初回は6/7。 改正刑法予備草案 第百条 予防監護ニ付セラレタル者ハ之ヲ予防監護所ニ収容シ適宜ノ治療其ノ他監護ノ為必要ナル処置ヲ為スヘシ 第百一条 予防監護ニ付セラレタル者収容ノ必要ナキニ至リタルトキハ行政官庁ノ処分ニ因リ…

(資料)責任に関する条文・審議(その2・現行刑法〜第二次大戦-2-)

前回(6/7)のつづきです。 改正刑法予備草案 第九十八条 保安処分ハ左ノ四種トシ裁判所之ヲ命ス 一 予防監護 二 酒癖矯正 三 労働留置 四 予防拘禁 第九十九条 禁錮以上ノ刑ニ該ル罪ヲ犯シタル心神喪失者又ハいんあ者ニ対シ無罪又ハ免訴ノ言渡ヲ為ス場合ニ…

(資料)責任に関する条文・審議(その1・現行刑法〜第二次大戦-1-)

刑法での責任論に関する条文などの資料です。なお、文字化けを防ぐために一部の漢字や記号を書き換えています。たとえば「いんあ」はひらがなに直しました。また、引用文中の【 】部分は私が挿入したものです。 責任論の範囲は、違法性の意識(それに関連し…

改正刑法準備草案の検討(2)

前回のつづき。 (治療処分) 第110条 精神に障害のある者が、禁固以上の刑にあたる行為をし、第15条の規定を適用する場合において、将来再び禁固以上の刑にあたる行為をするおそれがあり、保安上必要があると認められるときは、治療処分に付する旨の言渡を…

ジュリスト増刊 精神医療と心神喪失者等医療観察法

4/5で紹介した雑誌です。確かにかなり良い本なのですが、総論的・入門的な文章がないので、心神喪失者処遇の問題についてはじめて取り組もうとする方などは、何から手をつけていいのかわからないかもしれません。 おおまかに言えば、それぞれの章の最初にあ…

ジュリスト増刊 精神医療と心神喪失者等医療観察法

久々に、この分野では読む価値の高い雑誌が出ました。すごく内容が充実しています。 この本の紹介と、内容についての指摘は、これから少しづつ書いていきます。さて今回は、この本に書かれている損害賠償責任についての話。以前(3/25など)書いた「民法714…

東京高裁が原審一部取消

平成15年10月29日の判決です。判決の存在は知っていましたが、判例時報に掲載されましたのでちょっとみてみます。 事案は、統合失調症にかかった男性が近所の男性を殺害した事件について、殺害された男性の遺族が、行為者の男性とその母親に対して損害賠償を…

改正刑法準備草案の検討(1)

先日、編集のために自分の日記を読み返してみたら、途中で投げ出した連載がけっこうあることに気づきました。これらをなんとか終わらせてスッキリさせたいので、私にとっての2月は「完結の月」とします。がんばって完結させます。 ・・・といってるそばから…