日記

内乱罪、その本質と幇助罪との関係(その5)

先日(id:kokekokko:20060219)のつづき。 完成した校正第二案と、それに対する検討をみてみます。 校正第二案 第133条 国家ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僭窃シ其他朝憲ヲ蔑如シ若クハ皇嗣ノ順序ヲ紊乱スルコトヲ目的ト為シ内乱ヲ起シタル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス 1 …

内乱罪、その本質と幇助罪との関係(その4)

先日(id:kokekokko:20060218)のつづき。 完成した校正第一案と、それに対する検討をみてみます。 校正第一案 第133条 本朝ヲ顛覆シ又日本管内ニ於テ皇権ヲ拒絶シ又天皇ノ特権ヲ減損シ又皇嗣ノ順序ヲ紊乱スルヲ目的トナシタル重罪ハ其内乱ニ与シタル犯人ノ…

内乱罪、その本質と幇助罪との関係(その3)

先日(id:kokekokko:20060217)のつづき。 第一案の各条文に対して、ボアソナードと鶴田が検討を加えていきます。 第1条 第1章第3条ニ記載シタル天皇ノ主権ニ対スル重罪ヲ目的トスルニ非サル内乱ヲ起シタル者ハ軽流刑ニ処断ス 政府及各府県ノ官署ノ一個又ハ…

内乱罪、その本質と幇助罪との関係(その2)

先日(id:kokekokko:20060216)のつづき。 前回の草案をもとに、ボアソナードと鶴田との間で検討がなされました。 第134条 国家ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僭窃シ其他朝憲ヲ蔑如シ若クハ皇嗣ノ順序ヲ紊乱スルコトヲ目的ト為シ内乱ヲ起シタル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス…

内乱罪、その本質と幇助罪との関係(その1)

「付和随行」と「その他単に暴動に参加した」刑法第77条第1項は、以下のように定めています。 【現行】 (内乱)第77条第1項 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的…

中間法人

前回(id:kokekokko:20060212)のつづき。続・航海日誌さまから言及をいただきました。 http://www.seri.sakura.ne.jp/~branch/diary0602.shtml#0212 すなわち、従来は「基金の募集に関する文書」は申込用紙や募集広告とは別個のものという概念整理であった…

続きというわけではないですが補足。

前回(id:kokekokko:20060203)の補足。 ( )や[ ]のカッコが「だいかっこ」「しょうかっこ」なのに、なぜ「大若し」が「だいもし」じゃないのか、と先日書きましたが、考えてみると、括弧が音読みなのに対して若しは訓読みですから、重箱湯桶を避けてるの…

「又は」と「若しくは」

興味深い話題なので私も書いてみます。 http://blog.livedoor.jp/yauko_o/archives/50505644.html (雪だるま、その後。) id:kei-zu:20060202#p2 (■[法制執務]「又は」とか「若しくは」とは ) id:joho_triangle:20060131#p2 (■[memo]又は/若しくは ) i…

爆発物取締罰則の未遂罪と刑法施行法

以前書いたことがある爆発物取締罰則(とくに第1条の爆発物使用罪)について、未遂は処罰されるかという問題についてです。 今国会に提出されている法案でも、この布告の改正が予定されています。 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するた…

刑法第2条に従う罪

刑法第2条(すべての者の国外犯)は、国家固有の法益に対する罪への規定であったと説明されます。たとえば、松宮孝明・刑法総論講義第3版32ページでは「日本刑法でないと保護されない法益」としています。ところが、刑法施行法第26条には既に、船舶法や船員…

今年もよろしくお願いいたします。

以前書いた「今日の軍法会議」(id:kokekokko:20050510)について、id:hakuriku:20060107さまから言及いただきました。 しかし,ここに言う「軍裁判所」とは,一般名詞としての「軍裁判所」であって,特定の法律に基づく具体的な制度としての「軍事裁判所」…

民法の個数

前回(id:kokekokko:20051125)のつづきです。(7)相続税法など制定当時の相続税法では、家族法として明治31年法律第9号を引いていました。 相続税法(昭和25年3月31日法律第73号)【公布当時】 第七条 【本文略】但し、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける…

民法の個数

(1)問題の所在民法の個数について、「民法」という1つの法律なのか、それとも「財産法」と「家族法」という2つの法律なのか、という問題です。以下の説が考えられます。 A説:最初から現在まで1つの法律である。 B説:最初は2つの法律であったが、途中で…

廃止された法律の改正

日本法令索引では、戦時民事特別法(昭和17年法律第63号)は「現行法令」の項目で検索できます(「廃止法令」の項目で検索してもヒットします)。 戦時民事特別法がアクティブ扱いされている点につき、法律の条文を旅するさまや法制執務コラム集では、戦時民…

旧刑法77条1項の「罪ヲ犯ス意」

前回(id:kokekokko:20050726)のつづき。 玄説の展開は以下のとおりです*1。まず、当時のフランスにおいて、犯罪の主観的要件として必要とされていた「人を害するの意」に対して、ボアソナードは「すべての犯罪に対して必要であるわけではない」と考え、通…

ボアソナードにおける「故意」

前回(id:kokekokko:20050725)のつづき。ここでは、ボアソナードが念頭においた故意概念について検討してみます。 まず、旧刑法(明治13年太政官布告第36号)の規定は以下です。 第77条1項 罪ヲ犯ス意ナキノ所為ハ其罪ヲ論セス但法律規則ニ於テ別ニ罪ヲ定メ…

玄守道「故意に関する一考察(一)」立命館法学2005年1号181ページ

法制史の観点からの検討が充実した論文です。これに対する内容面についての検討は次回に書くとして、今回は表記について(単純な誤記誤植を除く)私が思ったことを書いてみます。 全体的に「仮名遣いは、筆者によって現代風に改めた。」(259ページ注35)と…

足立友子「詐欺罪における欺罔行為について(一)」法政論集208号97ページ

日独の法制史の分析が、詳細でした。 さて、128ページに、日本の旧刑法についての考察があります。 また、同条二項には、詐欺の手段によって文書偽造をした場合についての規定があり、偽造罪の手段としての詐欺が意識されていた点において、詐欺罪と偽造罪が…

最後の指摘

ここで私が他サイトの法律ネタについて指摘すると、現実で私が小言を言われることがありました。 「素人の書いたものにいちいち反応するな」とか「自分のするべきことをしろ」とか。まあ確かに、現実の場面で、法学部生などを相手に私が対等に法律の話をする…

浅田和茂「刑法総論」

特に責任の部分の記述が重厚でした。アクチュアルなどよりもかなり。 ■責任能力 コンヴェンションについて浅田説は、「生物学的要件が認められれば、心理学的要件は事実上推定されるべき」という立場です。これについては284ページ脚注7で以下のように述べて…

法改正の話

id:navix:20050622さまのところで、組織犯罪処罰法での組織的殺人罪の法定刑に関する疑問についての記事がありました。組織的殺人罪の法定刑は平成16年法律第156号によって改正され、死刑又は無期若しくは6年以上の懲役になっているのですが、ところが条文を…

暴力行為等処罰ニ関スル法律

暴力行為等処罰法が出たついでに、解釈上の疑問点を書いておきます。 第1条ノ2 1項 銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ一年以上十五年以下ノ懲役ニ処ス 3項 前二項ノ罪ハ刑法第三条、第三条の二及第四条の二ノ例ニ従フ さて、1項行為により致…

法改正ネタ

はてな複数アカウント取得に伴い、雑記風味の文章は別のところ(id:ameni)に書くとして、ひきつづきこっちでは[責任][精神医療と法]カテゴリに属する文章(あとそれらと性質が似ている[検討][日記][時事])を書いてゆきます。 譬えるならば、新しいアカウン…

ステサン154

もう次が出ているのですが、いまさら154。 今回、最初のほうのページでトラポとDACを扱っているのですが、菅野氏がemmラボとdCSに厳しい評価なのです。いわく、「味わいがない」、「趣味製品としてふさわしくない」と。 まあ確かに、両者とも業務用機器の…

監獄法の件

監獄法を改正する法案が可決されましたが(id:kokekokko:20050520)、立法形式上、旧監獄法(明治41年法律第28号)は廃止されてはいないので、附則は残ることになります。 そうすると 2 監獄則ハ之ヲ廃止ス但懲治人ニ関スル規定ハ当分ノ内仍ホ其効力ヲ有ス …

このサイトについて

資料などのメモを主にアップさせたいので、名前を変更しました。 「業務用」になっているのは、基本的に一般向けではないからです。 ** 来週からしばらくは、国会審議の資料をアップさせます。

監獄法/刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律 新旧対照表

http://www.niwatori.net/ameni/log/c03.html word版 http://www.niwatori.net/ameni/log/kangoku.doc とりいそぎ、作ってみました。刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案ではなく、被疑者・被告人・死刑囚のほうです。 法務省pdf http://www.moj.go.jp…

監獄法

全面改正の議論も最近されている監獄法です。まず、この法の第10条をみてみます。 監獄法(明治41年法律第28号) 第10条 本法ハ陸海軍ニ属スル監獄ニ之ヲ適用セス 「陸海軍ニ属スル監獄」。現在有効な法令だとは思えないような文言です。日本国憲法の制定と…

今では弁護士さんのブログなんて珍しくはないのですが、

昔はそんなに多くはありませんでした。そのうちの一つの、ある弁護士ホームページのコラムで、「司法試験受験生が教科書を読んで、何か新しいことを思いついて『なんで学者はみんなコレに気づいてないのかなー』などと思ったときには、そのうちの99%は受験…

グダグダの日記

はてなキーワードに「彼女」という項目があって(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c8%e0%bd%f7)、で、そのキーワードのページの一番下には『別の「彼女」を作る』というボタンがあるのですが、今日の私はそれにヒットしてしまいました。ボタンを押したら別…